AMWA–EMWA–ISMPP Joint Position Statement on Predatory Publishing

Translation to Japanese by ISMPP Members 

粗悪な出版(predatory publishing)に関する AMWA、EMWA
および ISMPP 共同声明

オンライン公表日:2019 年 7 月 29 日

American Medical Writers Association (AMWA)、European Medical Writers Association (EMWA)お
よび International Society for Medical Publication Professionals (ISMPP)は、科学研究公表物の
質、公正さ、信頼性を損なうような活動を行う粗悪なジャーナル(predatory journal:ハゲタ
カジャーナル、悪徳雑誌とも呼ばれる)およびその出版社により、科学出版界が危機にさら
されていることを認識している。この共同声明は、粗悪なジャーナルの特徴を明確に定めた
いくつかのガイドライン1–5を補完する。

粗悪なジャーナルは、研究成果を発表する研究者のみならず、査読された医学文献そのも
のに対しても重大な脅威をもたらす。正当なオープンアクセスジャーナルとは異なり 6、粗
悪なジャーナルは査読システムを金銭的な利益のためだけに利用し、倫理行動への配慮は
ほとんどない 7

World Association of Medical Editors (WAME)、Committee on Publication Ethics (COPE)、
International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE)および Council of Science Editors
(CSE)などの関係組織は、今日広く認知されている学会発表および論文公表の実施基準
(good publication practices)6,8–10 を支持している。粗悪なジャーナルはこのような基準に従
わず、代わりに Gold Open Access 出版モデル(出版料を著者が負担するモデル)を悪用する
11。粗悪なジャーナルのエディトリアルレビューおよびピアレビューの実施、ジャーナルの
運営方法、論文掲載料、論文の流布、インデックス作成、およびアーカイビング(掲載論文
の保管)についての説明は、収益を生み出すために故意にゆがめられている 1

粗悪な出版が大幅に増加することで最終的に害を被るのは科学文献である。公表物が長
期的に記録されない状態が続き、長期的に引用または閲覧ができない状態が続くことは、誠
実に行われた正当な研究に損失を与え、科学的データが損なわれるリスクがある 1。また、
粗悪なジャーナルへの論文掲載、または、知らないうちに粗悪なジャーナルの編集委員に
「任命された」ことにより、著者の評判に傷がつく危険性も存在する。さらに、粗悪なジャ
ーナルに論文を投稿した後で、著者が身動きできない状態に陥ることもある。ジャーナルに
よっては、一旦原稿が投稿されてしまうと、原稿を返却しない、または著者の抗議に反して
論文を公表する潜在的なリスクを伴う。

科学ジャーナル(粗悪なジャーナルを含む)の数は過去 15 年で大きく増加したこともあ
12、粗悪なジャーナルまたは「偽物」のジャーナルを見分けることが難しくなっている。
しかしながら、これらの見分けに役立つオンラインツールが入手可能であり、1,8、典型的な
粗悪なジャーナルおよびその出版社の特徴がいくつか明らかになっている。

  • 研究者を強引に勧誘する email を送付してくる出版社またはジャーナル
  • 一見馴染みがあるが、実は正当なジャーナル名を巧妙に模したジャーナル名
  • ウェブサイトのグラフィックスが劣悪である、専門用語が間違っている、リンクが
    切れている、広告が強引であるなど、ウェブサイトにプロフェッショナルさが感じ
    られない
  • ジャーナルまたは出版社のウェブサイト上の住所・電話番号が不完全(通りの名前
    や国内電話番号が示されていない)、または、ウェブサイト上の住所・電話番号が
    実際には存在しない
  • PubMed13 などの広く知られた引用システム、または Directory of Open Access Journals
    (DOAJ)14 などの正当なオンラインディレクトリーにおいて雑誌インデックスが付け
    られていない
  • 非現実的に迅速な査読を約束する、または査読プロセスについての説明がない
  • • 論文掲載料が不透明である(それに加えて非常に高い、もしくは非常に低い)、ま
    たは、論文掲載料を投稿時に支払うことになっている(査読結果にかかわらず論文
    掲載料の支払いが発生する)
  • 複数の医学専門領域を幅広くカバーする、または特定の専門分野の複数の下位専門
    領域をカバーする
  • 創刊されたばかりの雑誌があり、そこにはほとんど、あるいは全く論文が掲載され
    ておらず、アクセスもできず、質も明らかに劣悪である
  • 編集委員会が当該領域の専門家でないメンバー、あるいはそのジャーナルの出版国
    以外の国にいるメンバーで構成されている、または、編集委員が当該分野で出版経
    験のある者に知られていない
  • 投稿システムが過剰にシンプルで、質問事項がほとんどなく、利益相反やオーサー
    シップ関連の情報を求められない

最近、論文発表業績を上げる目的で論文を粗悪なジャーナルに投稿する例が多くみられ
るようになったが 15,16、このようなことはあってはならない。粗悪なジャーナルだと知りな
がら意図的に原稿を投稿することは倫理に反する。研究者だけでなく、メディカルライター
とエディターも、研究結果が投稿されるジャーナルの公正さ、歴史、活動規範、および評判
を確認する責務を負う 8。この共同声明では、全ての著者が、投稿する公表物の評判を検討
することによりデューディリジェンスを実施し、適切な査読システムがあり科学文献への
貢献を純粋に希求するジャーナルにのみ論文を送付することを奨励する。
科学コミュニティーは、粗悪なジャーナルに研究を公表することがもたらす弊害につい
て十分に認識し、それをどのように回避するかを理解しなければならない。AMWA、EMWA
および ISMPP はこの重大な問題を対処するにあたり、粗悪な出版、およびメディカルライ
ター等のパブリケーションの専門家が果たすべき責務について、メンバーの教育に全力で
取り組む。

科学コミュニティーは、粗悪なジャーナルに研究を公表することがもたらす弊害につい
て十分に認識し、それをどのように回避するかを理解しなければならない。AMWA、EMWA
および ISMPP はこの重大な問題を対処するにあたり、粗悪な出版、およびメディカルライ
ター等のパブリケーションの専門家が果たすべき責務について、メンバーの教育に全力で
取り組む。

謝辞

この共同声明は、AMWA、EMWA および ISMPP の代表者によって精査され、承認されたも
のである。この声明は、Writing CommitteeのメンバーであるBarbara GoodおよびMary Kemper
(AMWA)、Slavka Baronikova および Julia Donnelly(EMWA)、Jan Seal-Roberts および Donna
Simcoe(ISMPP)、そして各組織からのレビューアーである Shari Rager(AMWA)、Tiziana
von Bruchhausen および Beatrix Doerr(EMWA)、Anna Geraci および Al Weigel(ISMPP)の
尽力により作成された。

References

1. Laine C, Winker MA. Identifying Predatory or Pseudo-Journals [Internet]. World Association of
Medical Editors [updated 2019 Jun 18; cited 2017 Feb 18]. Available from:
http://www.wame.org/identifying-predatory-or-pseudo-journals

2. Cabell’s Blacklist Violations [Internet] [updated 2019 Jun 18]. Available from:
http://www2.cabells.com/blacklist-criteria

3. Cobey KD, Lalu MM, Skidmore B, et al. What is a predatory journal? A scoping review.
Version 2. F1000Res. 2018;7:1001.

4. Beall J. Predatory publishers are corrupting open access. Nature. 2012;489:179.

5. Beall’s List of Predatory Publishers [Internet] [updated 2019 Jun 18]. Available from:
http://openscience.ens.fr/ABOUT_OPEN_ACCESS/BLOGS/2017_01_23_Jeffrey_Beall_last_l
ist_of_predatory_journals.pdf

6. Open Access Scholarly Publishers Association – Code of Conduct [Internet] [updated 2019 Jun
18]. Available from: https://oaspa.org/membership/code-of-conduct

7. International Committee of Medical Journal Editors. “Fake,” “Predatory,” and “Pseudo”
Journals: Charlatans Threatening Trust in Science [Internet] [updated 2019 Jun 18]. Available
from: http://www.icmje.org/news-and-editorials/fake_predatory_pseudo_journals_dec17.html

8. International Committee of Medical Journal Editors. Responsibilities in the Submission and
Peer-Review Process [Internet] [updated 2019 Jun 18]. Available from:
http://www.icmje.org/recommendations/browse/roles-and-responsibilities/responsibilities-inthe-submission-and-peer-peview-process.html

9. Council of Science Editors. Predatory or Deceptive Publishers – Recommendations for Caution
[Internet] [updated 2019 Jun 18]. Available from:
https://www.councilscienceeditors.org/resource-library/editorial-policies/cse-policies/approvedby-the-cse-board-of-directors/predatory-deceptive-publishers-recommendations-caution

10. Berger M. Everything you ever wanted to know about predatory publishing but were afraid to
ask [Internet] [updated 2019 Jun 18]. Available from:
http://www.ala.org/acrl/sites/ala.org.acrl/files/content/conferences/confsandpreconfs/2017/Ever
ythingYouEverWantedtoKnowAboutPredatoryPublishing.pdf

11. Mizera K. What is Gold Open Access – useful links [Internet] [updated 2019 Jun 18]. Available

12. Shen C, Bjork BC. ‘Predatory’ open access: a longitudinal study of article volumes and market
characteristics. BMC Med. 2015;13:230.

13. PubMed [Internet] [updated 2019 Jun 18]. Available from:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed

14. Directory of Open Access Journals [Internet] [updated 2019 Jun 18]. Available from:
https://doaj.org/

15. Moher D, Shamseer L, Cobey KD, et al. Stop this waste of people, animals and money. Nature.
2017;549:23–25

16. Sharma H, Verma S. Predatory journals: the rise of worthless biomedical science. J Postgrad
Med. 2018;64:226–231.